デイサービスの申し送りを見直す|伝達漏れを防ぐ記録例と確認表
「記録には書いてあるのに、担当者が知らなかった」「朝に共有した変更が、帰りの送迎に反映されていなかった」。デイサービスの申し送りで見直したいのは、情報を残すところから、必要な人が受け取り、対応を終えるまでの流れです。
私は施設長として、前夜の救急搬送が施設に伝わっておらず、翌日の急変時に救急隊との情報共有に苦慮した経験があります。経過は家族向けの連絡帳の記事で紹介しています。家族に伝えていただく方法とともに、施設内で受け取った情報をどうつなぐかも考える必要があります。
この記事では、経営者・管理者が職員と申し送りを見直すために、優先順位、記録の型、担当者の確認、未完了事項の引き継ぎを整理します。
家族不在時の対応は、私の施設の実際の運用を紹介しています。記録様式・担当分担・導入手順は事業所で検討するための提案であり、当施設で導入して効果を検証した報告ではありません。記入例はすべて説明用の架空例です。
申し送りは、次の担当者が動ける情報にする
「今日は注意してください」だけでは、誰が、何を、いつまでに確認するのかが残りません。「家族から何を聞いたか」と「職員がこれから何をするか」を分けて書くと、次の担当者が引き継ぎやすくなります。
厚生労働省は、介護現場の業務改善として、記録項目や様式の見直し、情報共有の遅れや転記を減らす取組を示しています。[1] 本記事では、その考え方を通所介護の申し送りに当てはめて考えます。
まず、対応が必要な連絡について、次の3つを区別することを提案します。
- 受領:担当者が内容を読み、必要な対応を理解した。
- 引受:誰が対応するかが決まり、担当者が引き受けた。
- 完了:必要な確認・連絡・変更が終わり、結果が記録された。
連絡アプリの既読表示だけでは、誰かが対応を引き受けたとは限りません。逆に、日常のすべての記録に確認印を増やすと負担になります。まずは、送迎方法の変更、利用再開の調整など、対応漏れの影響が大きい項目に絞ります。
共有するタイミングを3つに分ける
申し送りノートへ書く前に、いつ相手へ届ける必要があるかを決めます。次の表は、連絡経路を整理するための案です。体調の緊急度を判定する基準ではありません。
| タイミング | 場面の例 | 届け方 |
|---|---|---|
| すぐに直接連絡 | 利用中の急な状態変化、帰宅時に予定していた家族が不在で連絡がつかない | 施設の緊急時・送迎時の手順に沿って、対応を判断する担当者へ直接つなぐ。必要な対応を記録作業より優先する。 |
| 該当する業務の開始前 | 当日の受け渡し方法の変更、次回利用に向けた確認事項 | 「本日中」だけで済ませず、送迎の出発前など、間に合う期限と担当者を決める。 |
| 定時の共有・振り返り | 次回の活動に生かしたい本人の希望、継続して検討する環境の工夫 | 所定の記録に残し、検討する日や会議へつなぐ。急ぎの変化がないかは別に確認する。 |
直接伝える必要がある連絡は、記録への入力だけで済ませません。受ける側が対応できない場合に、誰へ連絡し直すかも決めます。運転中や乗降介助中など、安全に応答できない場面は避け、施設の連絡手順に沿ってつなぎます。
記録は6項目でそろえる
新しい帳票を作る前に、今の介護記録や申し送り欄で不足している項目を確かめてください。同じ内容をノート、ホワイトボード、介護ソフトへ何度も書く運用は、変更時の食い違いにつながります。
| 項目 | 残すこと |
|---|---|
| 1.対象者・適用日 | 施設内で本人を確実に照合できる情報、いつの利用・送迎に関する連絡か。「今日」だけでなく日付を残す。 |
| 2.情報源・確認した事実 | 連絡を受けた日時・職員、誰から聞いた話か。本人の言葉、家族の説明、職員が見たことを区別する。 |
| 3.まだ分からないこと | 未確認の点、確かめる相手。「問題なし」「いつもどおり」と推測で埋めない。 |
| 4.次の対応・期限 | 何を確認・変更・説明するか。いつまでに必要か。必要に応じて判断を仰ぐ相手も書く。 |
| 5.担当・不在時の引継先 | 対応する人と、その人が不在・対応困難な場合の連絡先。「みんなで確認」にしない。 |
| 6.受領・引受・対応結果 | 誰がいつ確認・引受したか、何が決まったか。未完了なら、次の担当者と再確認の期限を残す。 |
申し送り欄には、必要な要点と、詳細を確認できる記録の場所を残します。詳しい経過が別の記録にある場合、全文を複製するより、担当者が確実に参照できる形にします。
「家族不在」の連絡を受けたときの記入例
私の施設では、家族不在時の送迎について、本人の状態と自宅環境を確認して個別に判断しています。また、帰宅時に立ち会う予定の家族が不在で連絡もつかない場合は、施設へ連絡して対応を判断し、登録された別の連絡先へ連絡しています。
そのため、家族から不在の連絡を受けたことと、その日の受け渡し方法が決まったことは分けて扱う必要があります。家族と事前に相談する内容は、家族不在時の送迎についての記事も参考にしてください。
短いメモだけでは、判断が済んでいるか分からない
曖昧さが残る記入例・架空
「Aさん、今日の帰りは家族不在。送迎担当に伝えてください」
この書き方では、不在の時間帯、受け渡しの調整状況、担当者への連絡が済んだかどうかを読み取れません。
受付と、調整後の追記を分ける
書き直した受付記録・架空
- 対象・適用日
- Aさん/10月7日の帰りの送迎。
- 受付・情報源
- 10月7日13:10、職員Bが家族から電話を受けた。家族の説明は「本日は16:30まで不在」。通常は家族が帰宅時に立ち会っている。
- 未確認
- 代わりに立ち会える人の有無と、本日の受け渡し方法。家族不在での受け渡しが了承されたわけではない。
- 次の対応・期限
- 相談員Cが家族へ確認し、施設長Dへ対応を相談。帰りの送迎が出発する前に、確定した方法を家族と送迎担当Eへ伝える。出発までに調整が終わらない場合も、CからDへ報告して対応を確認する。
- 引受
- 13:15、Cが内容を確認し、家族への連絡を引き受けた。現時点では調整中。Cが対応できなくなった場合はDへ引き継ぐ。
調整後の追記例・架空
14:00、家族と再連絡。登録されている別の家族が通常の送迎時刻に立ち会えると確認。施設長Dが当日の受け渡し方法を確認し、14:05にCから家族へ説明した。14:10、送迎担当Eが立ち会う人と受け渡し方法を確認。
送迎前の調整は完了。実際に誰へ引き渡したかは、送迎後に所定の記録へ残す。
これは記録方法を説明するための例です。実際の対応は本人の状態、事前の取り決め、当日の状況で異なります。「調整が終わった」と「実際の送迎が終わった」を混同せず、どの業務が完了したのかを記録します。
退院後の再開は「希望」と「決定」を分ける
「明日からまた利用したい」という家族の連絡を、そのまま「明日から再開」と記録すると、受け入れの確認が済んだように見えてしまいます。申し送りでは、本人・家族の希望、現在確認できている情報、施設としての決定を分けます。
再開相談の記入例・架空
希望:家族は10月8日の利用再開を希望している。
確認状況:退院後の移動方法に変更があると家族から聞いた。必要な介助と送迎方法は確認中。
次の対応:担当相談員が家族・ケアマネジャー等と必要な情報を確認し、施設内の関係職員へつなぐ。家族への次の連絡時刻を決め、利用日が確定した後に送迎担当へ伝える。
確認が済んでいない項目は、次の人からも分かるように残します。再開前に確認する内容は、退院後にデイサービスを再開するときの記事で整理しています。
欠席や再開の連絡から、送迎・食数・次回利用へつなぐ担当分担は、施設側の欠席管理の記事で確認できます。本記事の記録項目も、既存の欠席受付欄などと重なる部分をまとめて使ってください。
途中出勤者まで届く、確認の機会をつくる
朝の申し送りに出席していない職員にも、その後の業務に必要な変更は届く必要があります。施設内の一斉共有と、実際に担当する人の確認を組み合わせます。
- 送迎から戻ったとき:家族から受けた連絡を、施設内の誰へ渡すかを決める。連絡帳を所定の場所へ置くだけで終えない。
- 途中出勤・担当交代のとき:当日の変更事項と、引き継ぐ未完了の仕事を確認する時間を設ける。
- 帰りの送迎前:当日途中の変更を含め、受け渡し方法などを送迎担当が確認する。
- 担当者が退勤するとき:未完了事項を誰が引き受けたか、次の確認はいつかを残す。
「あとで見ておいて」だけで引き継ぐと、確認する前に業務が始まる可能性があります。管理者は、職員が情報を読む時間と、分からない点を確認する相手まで含めて、勤務の流れを整えます。
引受時には、「私が家族へ確認し、出発前に送迎担当へ伝えます」のように、次の行動を短く言葉にしてもらう方法もあります。特定の職員だけへ仕事が集まっている場合は、担当の割り振りも見直します。
最新の情報が分かる保管方法にする
紙でも介護ソフトでも、どこを見れば現在の決定事項が分かるかをそろえます。たとえば、「今回だけの変更」と「今後も続く変更」を区別し、適用日・更新日時・変更した職員を残す方法があります。
当日限りの家族不在を翌週にも引き継いだり、退院後の新しい支援方法が以前の記録に埋もれたりしないよう、情報の有効な期間を確認します。古い経過は必要な記録として保持しつつ、現在の対応と区別して参照できる形にします。
掲示する内容と、限られた職員が確認する詳細情報も分けます。電話番号、鍵の保管場所、詳しい健康情報などを、来訪者や他の利用者が見られるボードへ載せる運用は避けます。業務に必要な人が、事業所の決めた方法で確認できるようにしてください。
1週間試し、時間と伝達漏れを一緒に振り返る
最初から全業務の様式を変えると、職員が変更点を覚える負担も増えます。まずは「送迎に関する当日の変更」など一つの業務を選び、1週間程度試す方法を提案します。
- 変更前の状況を確認する。最近、どの情報が、どこで止まったかを職員と整理する。
- 確認する場所、担当者、期限、受領・引受・完了の記録方法を決める。既存の欄で足りる部分は活用する。
- 試行後、担当職員と実際の記録を見て、届かなかった理由と負担になった作業を確かめる。
- 不足していた項目を補い、使われなかった欄や二重の転記を見直す。
厚生労働省は、介護現場の生産性向上を考える際に、業務の効率化とケアの質の向上、職員間の負担の偏りにも目を向けています。[2] 申し送りを短くできたかとともに、必要な情報が業務に間に合ったかを確認します。
| 見る項目 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 必要な人への到達 | 対象となった変更の総件数と、業務開始時点で担当者の受領が確認できなかった件数。 |
| 期限を過ぎた仕事 | 未完了の件数と理由。相手への確認待ち、担当不明、業務量などを分ける。 |
| 確認のやり直し | 記録が見つからず同じことを聞き直した場面。安全のために必要な質問まで減らす目標にはしない。 |
| 職員の負担 | 記入・確認にかかる時間、二重の転記、特定の職員への仕事の集中。 |
比較するときは、対象業務と数え方をそろえます。変更が2件の日と20件の日では、件数だけの比較はできません。短期間の試行では傾向をつかむにとどめ、「漏れがゼロだったから安全が確立した」と結論づけないことも大切です。
明日の申し送り前に確かめる7項目
- 対象者と、いつの利用・送迎についての情報かが分かる。
- 確認できた事実と、まだ分からないことが分かれている。
- 急いで直接伝える必要がある連絡を、定時の申し送りまで保留していない。
- 対応する人と、不在時の引継先が決まっている。
- 「本日中」だけでなく、必要な業務に間に合う期限が決まっている。
- 途中出勤者を含め、担当する人の受領と引受を確認できる。
- 完了した内容、または未完了の理由と次の確認予定が記録されている。
明日はまず、朝の送迎で受けた変更が、施設内の担当者へ届き、必要な対応につながったかを一つ確かめてみてください。情報が止まった場所が分かれば、記録欄、確認の時間、担当の決め方のうち、どこを直すかを職員と具体的に話し合えます。
参考資料
- 厚生労働省「介護サービスにおける生産性向上のための7つの取組」(記録・報告様式の工夫、情報共有の工夫)
- 厚生労働省「介護サービスにおける生産性向上のとらえ方」
参考資料確認日:2026年9月30日。本記事の記録様式と確認表は、筆者が実務上の見直し案として整理したもので、行政が定めた様式ではありません。
